八ヶ岳南麓にある北杜市は、自然が豊かで、昔ながらの田園風景が残る地域です。観光においては、年間400万人以上もの方々が訪れます。八ヶ岳、甲斐駒ケ岳、瑞牆山の山々に囲まれた雄大な山岳景観、湧水の里と称されるほど湧水百選に選ばれる湧水群と源流があり、まさに山紫水明の地です。

この地域で食について語られるときに共通するのが「自然」・「伝統」・「循環」という言葉であると、私たちはたどりつきました。担い手の方々と対話を重ねるたびに、食に対する想いは、この3つのテーマに絞られていきました。

豊かな自然との共存と共生を意識すること、伝統を受け継いでいくこと、それらの地域資源が絶えることのない循環の仕組みを取り入れること、この考え方こそが、この地域ならではの食の哲学があり、生産という体系化した食の科学を産み出し、そして料理を代表とする食文化の表現方法は食の総合芸術だと強く感じ取れます。

この文脈で語られる食文化を観光特産として、磨き上げ、地域で共通理解のできたガストロノミーを提言できたらと想い立ち、2017年より活動を始めました。2018年に北杜ガストロノミー推進委員会を設立し、地域の第一人者、専門家を交えた検討チームと、地域の担い手向けのワーキングも行い、モデルコース作りに取り組みました。
また10月には、モニターツアーを実施し、県内外から有識者や関係者など20名を超える参加者を募り、モデルコースを実際に巡っていただき、参加者と担い手でワークショップを行い旅の振り返りとアップデートを行いました。

そのなかで、北杜市ならではの食文化体験とは、サステナブルなガストロノミーであると定義付けました。今後は、「風土を学ぶ場」となる観光特産を地域内外と共創する取り組みに昇華していきたいと考えています。
食の担い手たちがつなぐ「自然」・「伝統」・「循環」を体験できる場づくりを目指して、SDGsやウェルビーングの社会課題にも取り組んでいく。それがこの地域のローカル・ガストロノミーであると確信しています。